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固定受け・変動払いの金利スワップの評価損益が債券の評価損益と同じになることについて

家にある本を開いたら、4年くらい前に書いた標記の件の手書きメモが出てきた。別にメモを取っておく必要はないので、捨ててしまってよいのだが、折角なのでメモを捨てる前にここに転記しようと思う。

金利スワップとは

金利スワップとは、同一通貨の金利を交換する取引。元本の交換は行われない。交換する金利は、固定金利と変動金利である。これらが約定時点で等価になるように、もう少し厳密にいえば、固定金利キャッシュフローの現在価値と変動金利キャッシュフローの現在価値が約定時点で等しくなるように、固定金利の水準が決められる。

なお、変動金利は、その名の通り毎期変動するので、将来いかなる水準になるかは約定時点では分からないが、約定時点で行う固定金利水準の計算においては、将来の変動金利は、現時点で取引されている将来金利フォワードレート)どおりに推移するものとして計算される。

つまり、例えば、スワップ期間10年、年1回交換、固定金利C、各期のイールドをr_{i}、各期の1年フォワードレートをf_{i}とすると、以下の関係が成り立つようにCが決められる。

 \dfrac{C}{1+r_{1}} + \dfrac{C}{(1+r_{2})^{2}} + \cdots +\dfrac{C}{(1+r_{10})^{10}} \\ =\dfrac{f_{1}}{1+r_{1}} + \dfrac{f_{2}}{(1+r_{2})^{2}} + \cdots +\dfrac{f_{10}}{(1+r_{10})^{10}}

変動金利部分の現在価値の計算

さて、上式の右辺、変動金利部分の現在価値の式を整理しよう。まず、r_{1}=f_{1}であり、また、イールドとフォワードレートの関係性から、各期のフォワードレートは、

 (1+r_{1})(1+f_{2})=(1+r_{2})^2より、 f_{2}={(1+r_{2})^2}/{(1+r_{1})}-1

 (1+r_{2})^2(1+f_{3})=(1+r_{3})^3より、 f_{3}={(1+r_{3})^3}/{(1+r_{2})^2}-1

 \cdots

 (1+r_{9})^9(1+f_{10})=(1+r_{10})^{10}より、 f_{10}={(1+r_{10})^{10}}/{(1+r_{9})^9}-1

であるから、これらを代入すると、

 \dfrac{f_{1}}{1+r_{1}} + \dfrac{f_{2}}{(1+r_{2})^{2}} + \dfrac{f_{3}}{(1+r_{3})^{3}}+ \cdots +\dfrac{f_{10}}{(1+r_{10})^{10}} \\ =\dfrac{r_{1}}{1+r_{1}} + \left(\dfrac{1}{1+r_{1}}-\dfrac{1}{(1+r_{2})^2} \right)+\left(\dfrac{1}{(1+r_{2})^2}-\dfrac{1}{(1+r_{3})^3} \right) \\+ \cdots + \left(\dfrac{1}{(1+r_{9})^9}-\dfrac{1}{(1+r_{10})^{10}} \right) \\ = 1 - \dfrac{1}{(1+r_{10})^{10}}

が成り立つ。つまり、

 \dfrac{C}{1+r_{1}} + \dfrac{C}{(1+r_{2})^{2}} + \cdots +\dfrac{C}{(1+r_{10})^{10}} = 1 - \dfrac{1}{(1+r_{10})^{10}}

が成り立つ。

固定金利水準の計算

上式の右辺第二項を左辺に移項すれば、

 \dfrac{C}{1+r_{1}} + \dfrac{C}{(1+r_{2})^{2}} + \cdots +\dfrac{C+1}{(1+r_{10})^{10}} = 1

となるが、これは債券で考えれば、償還金1、クーポンレートCの債券の価格が1であること、つまりパー(償還金と同じ価格)であることを示している。

いま、固定金利Cが決めたいものであるが、この式に従えば、求める固定金利の水準は、約定時点のイールドにおいて債券価格がパーになるように決めた債券のクーポンレート水準になる。

債券の評価損益

さて、償還金1、クーポンレートC、足下の(各期の)イールドr_{i}のもとで価格が1(つまりパー)の債券を考える。もちろん足下の評価損益はゼロである。

いま、イールドがr^{'}_{i}に変化したとすると、この債券の評価損益は、

 \dfrac{C}{1+r^{'}_{1}} + \dfrac{C}{(1+r^{'}_{2})^{2}} + \cdots +\dfrac{C+1}{(1+r^{'}_{10})^{10}} - 1

と計算できる。

固定受け・変動払いの金利スワップの評価損益

続いて、固定受け・変動払いの金利スワップについては、その評価損益は、固定金利部分の現在価値から変動金利部分の現在価値を減じたものであるから、

 \dfrac{C}{1+r_{1}} + \dfrac{C}{(1+r_{2})^{2}} + \cdots +\dfrac{C+1}{(1+r_{10})^{10}} - 1

である。もちろん、この値は足下ではゼロである。

さて、イールドがr^{'}_{i}に変化したとすると、この金利スワップの評価損益は、

 \dfrac{C}{1+r^{'}_{1}} + \dfrac{C}{(1+r^{'}_{2})^{2}} + \cdots +\dfrac{C+1}{(1+r^{'}_{10})^{10}} - 1

となるが、これは先に見た債券の評価損益と同じである。

つまり、債券の取得と、固定受け・変動払いの金利スワップの取得は、金利変動に対して同じ効果がある。素晴らしい。

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※間違い等ありましたらお手数ですがコメント等いただけますと幸甚です。