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拡散方程式の解析解の計算(2) フーリエ変換法

先日、拡散方程式の解析解を変数分離法により計算したが、拡散方程式といえば、やはりフーリエ変換だと思うので、今回は「フーリエ変換法」で解くことにする。

考える問題(前回の再掲)

拡散方程式とは、次の形の線形偏微分方程式であった。

 \dfrac{\partial u}{\partial t} =\nu \dfrac{\partial^{2} u}{\partial x^{2}}

右辺の拡散項は、時間の経過と共に初期値が広がっていくことを表す。

この解のうち、初期条件 (1.0+\cos \pi x)および周期境界条件 u(0,t)=u(2,t) を満たす解を求めることにする。なお、\nu (\gt 0) は定数。

フーリエ変換法による解析解

フーリエ変換とは

変数分離法では、求める解を、周期の異なるサイン関数とコサイン関数の和(級数和)で表したが、その際の周期は離散的なものであった。では、周期を連続量にしたらどうであろうか。

実際そのように考えることは可能で、与えられた関数f(x)に対して、次のフーリエ積分公式が成り立つ。(ただし、右辺が必ず収束するとは限らない)

 f(x) \sim \dfrac{1}{2 \pi} \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} \int_{-\infty}^{\infty} f(y)e^{i \omega (x-y)}dy d \omega

さて、このフーリエ積分公式の中の下記部分を「フーリエ変換」という。

 \mathscr{F} \left [ f(x) \right ] (\omega) =F(\omega)= \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty}f(y)e^{-i \omega y}dy

および、残りの部分を「逆フーリエ変換」という。

 \mathscr{F}^{-1} \left [ F(\omega) \right ] = \dfrac{1}{2 \pi} \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty}F( \omega)e^{i \omega x}d \omega

つまり、フーリエ積分公式は、フーリエ変換フーリエ逆変換を用いて次のように書かれる。

 f(x) \sim \mathscr{F}^{-1} \left [ \mathscr{F} [ f(x) ] \right ]

一般解の導出

さて、求める解u(x,t)および初期条件h(x):=u(x,0)の(xに関する)フーリエ変換を、

 U_{\omega}(t) = \mathscr{F} \left [ u(x,t) \right ]

 H(\omega) = \mathscr{F} \left [ h(x) \right ]

と書くことにする。

ここで、拡散方程式をxに関してフーリエ変換すると、

 \begin{equation} \begin{cases} \dfrac{d U_{\omega}}{dt} = - \nu \omega^2 U_{\omega} \\ U_{\omega}(0) = H(\omega) \end{cases} \end{equation}

となって常微分方程式に帰着するが、これは簡単に解けて、

 U_{\omega}(t) = H(\omega) e^{- \nu \omega^2 t}

を得るから、この解を逆フーリエ変換することで、一般解を、

 u(x,t)= \dfrac{1}{2 \pi} \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} U_{\omega}(t) e^{i \omega x} d \omega

として求めることができる。

初期条件を満たす解(特殊解)の計算

初期条件のフーリエ変換H(\omega)は、

 H(\omega) \\ =\displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} (1+\cos \pi y) e^{-i \omega y} dy \\= 2 \pi \delta (\omega) + \pi (\delta (\omega - \pi) +\delta (\omega + \pi))

であるから(ここで\deltaデルタ関数*1U_{\omega}(t)は、

 U_{\omega}(t) = \left( 2 \pi \delta (\omega) + \pi (\delta (\omega - \pi) +\delta (\omega + \pi)) \right)e^{-\nu \omega^2 t}

となる。そのため、初期条件を満たす解は、

 u(x,t) \\ =\dfrac{1}{2 \pi} \displaystyle \int_{-\infty}^{\infty} U_{\omega}(t) e^{i \omega x} d \omega \\= \dfrac{1}{2 \pi} (2 \pi + \pi e^{- \nu \pi^2 t}e^{i \pi x} + \pi e^{- \nu \pi^2 t}e^{-i \pi x}) \\ =\dfrac{1}{2 \pi} (2 \pi + \pi e^{- \nu \pi^2 t}(2 \cos \pi x)) \\=1+ e^{- \nu \pi^2 t} \cos \pi x

と計算できる。なお、この解は周期境界条件 u(0,t)=u(2,t) を満たす。

初期条件等によっては初等関数で書き下せないこともあるが、本例ではフーリエ変換を使うことで、非常に簡単に解を求めることができた。

*

間違い等ありましたらお手数ですがコメント等いただけますと幸甚です。

*1:フーリエ変換表等を参照