過去にKdV方程式の解を数値計算により求め、その挙動を視覚的に観察したことがあった。また、前にソリトン解を初期値にした場合の解の挙動を観察したこともあった。今回は、ソリトン解とは少し異なる解を初期値にした場合の解の挙動を観察してみようと思う。
- KdV方程式とは
- 初期値を1ソリトン解よりも低い波にした場合の挙動
- 初期値を1ソリトン解よりも高い波にした場合の挙動
- 初期値を1ソリトン解よりもずっと高い波にした場合の挙動
- おまけ:初期値をガウス関数の定数倍の波にした場合の挙動
KdV方程式とは
KdV方程式の係数の書かれ方としては色々あるが、ここでは前回同様ソリトン解の挙動を考察する際によく用いられる以下の形の式を考えることにする。
また、この式の1ソリトン解は、例えば、で与えられる。(なお、初期値の最初に1を加えているが、これは特に意味がなく、以降で確認するグラフィカル上の見栄えをよくするための手当である。)
初期値を1ソリトン解よりも低い波にした場合の挙動
では、初期値を1ソリトン解よりも波高の低い、で与えてみよう。この場合に初期値の山はどうなるだろうか。やはり時間が経つと消えてしまうのだろうか。
気になる結果は下記の通り。ここで、周期境界条件および
、
とし、KdV方程式の差分化は過去と同じ方法とした。(ただし、前提とした方程式の係数は過去と異なる)
ソリトン解とは異なり、さざ波が発生するものの、山のピークの波高は初期値のピークである2を若干下回って推移していく様子が確認できる。(初期値よりも緩やかな波形となる)
初期値を1ソリトン解よりも高い波にした場合の挙動
続いて、初期値を1ソリトン解よりも波高の高い、で与えてみよう。この場合に初期値の山はどうなるだろうか。
この場合もさざ波が発生する。また、山のピークの波高は初期値のピークである4を若干上回って推移していく様子が確認できる。(初期値よりも急峻な波形が出現する)
初期値を1ソリトン解よりもずっと高い波にした場合の挙動
では、初期値を1ソリトン解よりもずっと波高の高い波にしたらどうなるだろうか。一層急峻な波形が出現するのだろうか。そこで、初期値をで与えてみよう。この場合の結果は以下の通り。
面白いことに波が分離して、初期値よりも急峻な波と、初期値よりも緩やかな波の2つの波が出現する。(実際、この初期値は2ソリトン解とピタリ一致しているわけではないため、この2つの波のほか、若干のさざ波も発生する)
おまけ:初期値をガウス関数の定数倍の波にした場合の挙動
出現する波の形が、確率論等でよく出てくる正規分布の分布関数(ガウス関数)のようにも見えるため、最後に、初期値をガウス関数の定数倍で与えてみよう。具体的には、初期値をで与えることにする。この場合の結果は以下の通り。
わずかにさざ波が発生するようにも見えるが、ほぼほぼ初期値を保ったまま、かなり安定的に推移することが分かる。
とはいえ、は、KdV方程式に代入すればすぐに分かるが、決してKdV方程式を満たさない。そのため、当該初期値はKdV方程式の解ではない。
しかしながら、を
の周りでテイラー展開すると、
である一方、も同じく
の周りでテイラー展開すると、
であることから、のオーダーで近似すれば、
が成り立つことから、1ソリトン解は、
と近似可能である。したがって、上記の計算では、この近似解を初期値にしていたわけであるが、この場合もかなり安定的な推移を示すことが分かる。
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間違い等ありましたらお手数ですがコメント等いただけますと幸甚です。